ある9月の物語

2006年9月21日 日常
先週末、町は巨大な台風に、僕は強烈なwaveに襲われた。
記憶が風化しないうちにどうしても書いておきたく思う。

その日はいつも通りにスタートしたはずだった。
病棟では95歳のばあちゃんが敬老の日を前に
意識が徐々にもうろうとし始めていた。
先週から骨盤内腫瘍に対するモルヒネのパッチが10mg
に増えて苦痛からはほとんど解放されつつある
ところだ。輸液も500ml/日としぼり、穏やかな
landingを心から願っていた。
「娘さんの来らしたら呼んでくれんね」
僕はNrs.に伝え外来へ向かった。
「朝礼任せてすまん」施設長にすれ違いざま声をかけた後
first waveが僕を襲った。
完全な水様便であった。
まずいなあ今日は内視鏡何人か入ってるし。
ま、なんとか頑張るかあ。
...................その後15分ごとにトイレへ。
水を飲むと大噴火(噴水?)。吐気止めの注射を打ち診療続行。
みるみる笑顔と肌のうるおいが削られていく。
外来チーフの看護士Mもどうやら洒落になっていないらしい
と気づき、いつものリハや注射だけの人に話は次回にと
説明をしてくれている。ありがたや。
患者さんは途切れることなく夕方18時に診療が終了したとき、
僕はひからび、乾いた声で自分への点滴の指示を出すのが
精一杯だった。気づいたら38度ちょっと熱が出ていた。
家に帰ると息子、娘に伝染るとよくないと言うことで
実家で点滴を始めた。21時妻がのぞきにきたが
お父さんには近づいちゃいけませんと寂しい言葉(涙)
それでも娘がこっそり寄ってきてほっぺにキスしてくれた。
おとさんは、本当に泣いた。
朝までしっかり点滴して土曜の午前を乗り越えれば
日曜日。来週にはまた調子を取り戻せるぞ〜
未だ絶食中、飲水も不可。
深夜にばあちゃんが亡くなった。

現在一ヶ月たっておりすっかり元気になった僕だが
もはやその苦しさは忘却の彼方へと吹き飛んでしまっている。
ただこれだけは誓うことができる。いくら根性なしと罵られ
ようとも、もう二度とスッポンの生き血など飲まない、と。

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